リクルート「ゼクシィ縁結び」終了から見える結婚相談所業界の転換点

大手が撤退を決断した理由
2025年11月17日、リクルートは衝撃的な発表を行いました。マッチングアプリ「ゼクシィ縁結び」と結婚相談所「ゼクシィ縁結びエージェント」のサービス終了です。
ゼクシィ縁結びは2026年3月末、ゼクシィ縁結びエージェントは2026年6月末にそれぞれサービスを終了します。リクルートは終了の理由を「事業環境の変化やサービスの利用状況などを総合的に判断した結果」としていますが、その背景には結婚相談所業界が直面する深刻な構造問題が隠れています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC177BU0X11C25A1000000/
リクルートと「ご縁」の関係
リクルートの創業者が神社のおみくじで事業を始めたというエピソードは有名です。「ご縁」を大切にする企業文化のもと、2015年に婚活ブームに乗って結婚相談所業界へ進出しました。
ゼクシィ縁結びエージェントは、他の相談所と比べて圧倒的に安価な料金設定が特徴でした。そのおかげもあり、会員数は業界でもトップクラスを誇り、多くの人にとって「手の届く結婚相談所」として機能していました。
「安さ」が招いた落とし穴
しかし、ここに大きな問題が潜んでいました。
結婚相談所業界には、こんな格言があります。「安さを売りにすると、質の良い会員は来ず、クレーマーだらけになって潰れる」
私も結婚相談所を運営する師匠から「絶対に安売りはするな!」と口酸っぱく言われてきました。これは単なる経営戦略ではなく、業界の本質を突いた教えなのです。
会員数より「会員の質」が重要
結婚相談所業界では、よく会員数を競う傾向があります。しかし、実際に重要なのは**会員数ではなく「会員の質」**なのです。
質の良い会員が集まると:
- マッチングが自然と増える
- クレームやトラブルが減少する
- 成婚率が向上する
- サービス全体の満足度が上がる
ゼクシィ縁結びの撤退は、まさにこの「会員の質」の問題が裏目に出た結果ではないでしょうか。
コロナ禍後の「結婚相談所戦国時代」
コロナ禍以降、結婚相談所業界は大きく様変わりしました。
加盟店型の結婚相談所が急増し、業界は完全な「戦国時代」に突入。実は今、結婚相談所は過密状態になっています。マッチングアプリ運営会社も、2019年3月末の5社から2025年3月末には28社と、6年間で5.6倍に増加しています。
IT系企業の参入で変わった業界構造
実は、この流れは2010年以降に始まっていました。IT系企業が結婚相談所業界に本格参入したのです。
リクルートのゼクシィ縁結びもその一つですが、IT企業の参入により:
- マッチングアプリと結婚相談所の融合
- データベース・AIを活用したマッチング
- オンライン完結型のサービス
- 低価格・大量会員モデルの登場
といった新しいビジネスモデルが生まれました。
これは業界に革新をもたらした一方で、従来型の「人と人との繋がり」を重視する結婚相談所との価値観の違いも浮き彫りにしました。IT企業は効率化とスケールを追求しましたが、結婚というデリケートな問題に「効率」だけで対応できるのか——今回のゼクシィ縁結びの撤退は、その答えの一つと言えるかもしれません。
結婚相談所の「多様化」と「カオス化」
興味深いのは、この戦国時代に起きているのが単なる量的拡大だけではなく、結婚相談所の多様化という現象です。
当時、私は日本で初のオタク専門の結婚相談所ということで脚光を浴びました。すると「特化した方がウケる」という風潮が業界に広がり、今では似たようなコンセプトで運営される結婚相談所が多数存在します。
現在では、以下のような特化型結婚相談所が次々と誕生しています:
- オタク・アニメ好き専門
- 高学歴専門
- 医師・士業専門
- シニア専門
- LGBTQ+対応
- 価値観特化型(例:非ワクチン派など)
多様化自体は悪いことではありません。しかし、問題は**「特化」を謳いながらも実態が伴わない事業者の増加**です。これが業界の「カオス化」を招いています。
「副業相談所」の急増という新たな問題
さらに深刻なのは、副業として結婚相談所を始める方の急増です。
最近では、以下のような「本業ありき」の結婚相談所が増えています:
- 不動産業者 → 結婚後に家を購入してもらうため
- 家具販売業者 → 結婚後に家具を買ってもらうため
- 保険代理店 → 結婚を機に保険に入ってもらうため
- その他の副業事業者 → 様々なビジネスチャンスを狙って
これ自体は一つのビジネスモデルかもしれません。しかし、相談力が弱いところが多いのも実情です。本部の研修で教わっただけの知識で運営している事業者が目立ちます。
「先生」と呼ばれる資格はあるのか
かつて結婚相談所の仲人は「先生」と呼称されていました。今は上下関係を表すという理由で、この呼び方も関係性がファジーになってきました。
しかし、問題の本質はそこではありません。
「先生」と呼ばれるに値する知識や指導力があるのか——これが問われているのです。
本当の意味での「先生」とは:
- 豊富な人生経験と知識を持つ
- 会員一人ひとりに寄り添える傾聴力
- 的確なアドバイスができる洞察力
- 成婚まで責任を持って導く覚悟
こうした資質を持たずに、ただ「結婚相談所」という看板を掲げているだけの事業者が増えているのが現状です。これが業界の「斡旋所化」「カオス化」の正体なのです。
若者世代の「高額サービス離れ」
20代~30代の若者層は、結婚相談所の高額なサービス料金にうんざりし始めています。
一方で、かといって料金を高額化すると敷居が高くなり、「どれが良い結婚相談所なのか選びにくい」という状況も生まれています。業界は今、非常に難しい時代に直面しているのです。
行政婚活も転換期を迎える
高市政権も、婚活で少子化対策をするより、結婚し、家庭を持つ人を優遇する政策へと舵を切ろうとしています。
これは、行政による婚活事業も今後縮小していく可能性を示唆しています。「出会いの場」を作るだけでは少子化問題は解決せず、結婚後の経済的支援こそが重要だという認識の転換です。
結婚相談所が生き残るために必要なこと
ゼクシィ縁結びの終了は、業界全体への警鐘です。
これからの結婚相談所に求められるのは:
- 適正価格でのサービス提供 – 安売りではなく、価値に見合った料金設定
- 会員の質の確保 – 真剣な出会いを求める会員の獲得
- 本物の相談力 – 研修だけでない、実践に基づいた知識と経験
- 丁寧なカウンセリング – 単なる紹介ではなく、寄り添ったサポート
- 高い成婚率の実現 – 数ではなく結果を出すこと
- 差別化されたサービス – 他社にはない独自の強み
- 副業ではない本気度 – 会員の人生に責任を持つ覚悟
おわりに
大手リクルートの撤退は、結婚相談所業界の構造的な問題を浮き彫りにしました。
「安さ」だけでは生き残れない。 「会員数」だけでは意味がない。 本当に価値あるサービスとは何か。
結婚相談所業界は今、その本質が問われています。
これから結婚相談所を選ぶ方は、料金の安さや会員数だけでなく、サービスの質、カウンセラーの対応、成婚実績をしっかり見極めることが大切です。
そして業界で働く私たちは、真摯にお客様と向き合い、本当に価値あるサービスを提供し続けることが求められています。
この記事は2025年11月17日のリクルートの発表をもとに執筆しました。
