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召集令状が届いた翌日、彼は結婚式を挙げた

2026 5/13
ブログ 婚活心理学 男性の相談
2026-05-19
軍服姿の男性と白いウェディングドレスの花嫁が向き合う、戦時中の結婚式をイメージしたイラスト
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戦時中に出征前の男性が結婚した理由を、行動経済学の「互恵性(Reciprocity)」理論と歴史的事実から解説。家名存続・国策・遺族年金・感情的つながりという4つの動機を通じ、「自分のためではなく誰かのための結婚」という視点を現代婚活に接続する。婚活コンサルタント・横井むつとも(ミューコネクト株式会社)による実例を含むナラティブ婚活コラム。

「親孝行って、何だと思いますか」

33歳の男性会員が、初回面談でそう言った。

私立の名門校を卒業したエリートだった。学校も、趣味のオタ活も、親に一度も反対されたことがない。好き勝手にやらせてもらった20年間だった。

「旅行とかプレゼントとか、そういうのじゃないと思うんです。孫の顔を見せること。それが一番の親孝行じゃないかと思って、ここに来ました」

自分のための結婚ではなかった。誰かへの恩返しとして、結婚を選んだ。

その話を聞きながら、私はある時代の写真を思い出していた。

白無垢姿の花嫁と、軍服の花婿。新婚生活は3日間。そのまま夫は戦死した。

「死ぬかもしれないのに、なぜ結婚するのか」

戦時中の人々が出征前に結婚した理由を調べると、結婚とは何かという問いの本質が見えてくる。


目次

なぜ戦時中に婚姻数が増えたのか

戦争が始まると、結婚する人が増える。

日本でも日中戦争が開始された1937年、太平洋戦争が開始された1941年に婚姻数が大きく増加した。現代のウクライナでも、戦争が始まった2022年以降、首都キーウで5か月間に平時の8倍以上の婚姻届が提出されたという。

「どうせ死ぬなら結婚しても意味がない」と考えた人もいた。実際、そう言って独身を貫いた男性もいたと記録に残っている。

一方で、「死ぬかもしれないからこそ結婚する」と動いた人たちがいた。

なぜか。その理由は、4つに整理できる。


理由① 家名を絶やさないために——互恵性という本能

当時の日本には「家制度」があった。

家とは、個人ではなく一族の継続単位だ。男子が死ぬ前に子を残すことは、個人の欲求ではなく、一族への義務だった。

「せめて所帯を持たせてから送り出したい」

それは親の切実な願いだった。召集令状が届いてから急いで式を挙げるケースも珍しくなかった。花婿が戦地にいるため、花嫁だけで式を済ませた例すらある。

ここに、行動経済学で言う**互恵性(Reciprocity)**の原理が静かに働いている。

人間は「受けた恩を返したい」という強い動機を本能的に持つ。育ててもらった。守ってもらった。だから返したい——その感情は、損得計算ではなく、もっと深いところから来る衝動だ。

冒頭の33歳の彼が「孫の顔を見せたい」と感じたのも、戦時中の男たちが死を前に「家を絶やしてはならない」と動いたのも、構造は同じだ。誰かに何かをしてもらったとき、人間はそれを返さずにはいられない。


理由② 国が結婚を義務にしていた

「産児報国」「結婚報国」——戦時中には、こんなスローガンが掲げられていた。

1941年、閣議決定された人口政策確立要綱により、結婚と出産は国民の義務として位置づけられた。「結婚はもはや個人の私事ではなく、国民としての大切な義務」という価値観が社会全体に浸透していた。

個人が「結婚したい」と思う前に、社会が「結婚しなさい」と構造的に押し出していた時代だった。

翻って現代はどうか。「結婚しなくてもいい」「一人でも幸せになれる」という選択肢が増えた。自由になった分だけ、踏み出す理由を自分の内側に探さなければならなくなった。


理由③ 妻の生活を守るために

もう一つ、見落とせない現実的な理由がある。

戦死した場合、籍に入っている妻には遺族年金・遺族恩給が支給された。

入籍していなければ、何も出ない。

「死ぬかもしれないから結婚しない」ではなく、「死ぬからこそ、先に籍を入れておく」。残される人間への最後の責任として、結婚を選んだ男たちがいた。

ここにも互恵性がある。一緒になってくれる人がいる。自分を待ってくれる人がいる。その恩を、せめて制度の形で返しておきたい。 愛情の表現であり、同時に非常に誠実な判断だった。

ナラティブ婚活では、条件より先に「この人のために何かしたい」という感情を大切にしている。詳しくはナラティブ婚活とはを読んでほしい。


理由④ 死の前夜に、人はつながりを求める

1945年3月10日、東京大空襲の前夜。

焼夷弾が降り注ぐ数時間前に、婚約したばかりの若いカップルがいた。

論理ではない。制度でもない。ただ、死が近づいたとき、人間は誰かとつながっていたいと思う。その原始的な感情が、結婚という形をとった。

死の恐怖は、人間に「今、誰かと結ばれたい」という衝動をもたらす。これは時代も国境も超えた、人間の本能だ。


「自分のため」じゃなくていい

現代の婚活では、こんな言葉をよく聞く。

「自分が本当に好きになれる人じゃないと」 「自分が幸せになれるかどうか、まだわからない」 「自分の気持ちに確信が持てない」

全部、「自分」が主語だ。

でも冒頭の33歳の彼は違った。「自分が幸せになりたい」ではなく、「親に孫の顔を見せたい」が動機だった。自分のための結婚ではなく、誰かへの恩返しとしての結婚。

戦時中の男たちも、同じ構造で動いていた。

家族のため。残される妻のため。一族の血を継ぐため。「自分」ではなく「誰か」が、彼らを結婚へと動かした。

互恵性とは、弱さではない。誰かに何かをしてもらったことを覚えている、という人間としての誠実さだ。

その気持ちを動機にできる人は、婚活においてひとつの強さを持っている。相手を幸せにしようとする人間は、結婚してからも強い。


「なぜ結婚するのか」、あなたはどう答えるか

条件が合っても踏み出せない。好きかどうか確信が持てない。うまくいく保証がないと動けない。

その迷いはよくわかる。でも少し立ち止まって、こう考えてみてほしい。

あなたが誰かに返したい恩は、ないだろうか。

戦時中に結婚した人たちには、「うまくいく保証」など最初から存在しなかった。それでも動いたのは、守りたい人がいたからだ。

「この人と、家族になりたい」「あの人に、孫の顔を見せたい」。そのくらいシンプルな理由で、十分だ。


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