「合理的な婚活」はなぜ失敗しやすい?心理学研究で検証する、恋愛と婚活の切り分け方

執筆:横井むつとも(ミューコネクト株式会社 代表取締役)
公開日:2026年9月29日/最終更新日:2026年9月29日
この記事の要点
- 恋愛は感情が先で条件は後から分かり、お見合い・婚活は条件が先に見える。この順番の違いが、脳の使い方の違いになる。
- 婚活の失敗は、理屈っぽさではなく、考える場面で恋愛のやり方(感情まかせ・減点法)のまま動くことから起きやすい(筆者の見方)。
- 会う前は条件を整理し、会った後は感覚を観察し、決断の前は生活面を熟慮する。場面ごとに使い分ける。
結論:恋愛と婚活は、使う脳が違う
婚活で「合理的に進めたいのに、うまくいかない」人は少なくありません。原因は、理屈っぽいことではありません。考えるべき場面で、恋愛のやり方(感情まかせ)のまま動いてしまうことです。
この記事では、YouTube動画で話した「恋愛脳」「婚活脳」の考え方を、心理学の研究と照らし合わせて検証します。
この記事を書いた人
横井むつとも(婚活参謀★むつとも)。ミューコネクト株式会社 代表取締役。岐阜県大垣市を拠点に、東京・大阪・名古屋でも結婚相談室を運営しています。2011年に日本初のオタク特化型結婚相談所を開業し、15年以上、1,200名以上の成婚をお手伝いしてきました(※「成婚」の定義:交際中のお二人が、互いに将来の結婚を承諾したこと)。婚活関連の著書は3冊あります。
この記事は、現場での経験と、研究で確認できたことを分けて書いています。私の経験にもとづく見方には「筆者の見方」と記し、研究の紹介には出典を付けています。
「恋愛脳」「婚活脳」とは何か
どちらも学術用語ではなく、説明のための呼び方です。
- 恋愛脳:ときめきや直感を判断の軸にする思考モード
- 婚活脳:条件を整理し、優先順位をつけ、結婚という意思決定を設計する思考モード
「速い思考・遅い思考」をどう使うか
この2つのモードは、ダニエル・カーネマンの「速い思考(システム1)・遅い思考(システム2)」に重ねて説明しています。
学術的な位置づけには注意が必要です。人の思考を二つのタイプにきれいに分ける考え方には、心理学の中にも批判があります(Melnikoff & Bargh, 2018)。一方で、この批判に反論する研究者もいて、議論が続いています。ですから、脳の中に二つのシステムが実在する、と断定するつもりはありません。
そのうえで、私は次のように考えています。「今の自分の思考は、システム1(直感)か、システム2(熟慮)か」と意識することで、思考や感情をコントロールしやすくなる、という考えです。これは私の現場経験にもとづく考えで、研究で確立された結論ではありません。
とくに恋愛と婚活は、思考を切り分けやすい領域だと考えています。場面がはっきり違うので、「今はどちらの脳を使う場面か」を決めやすいのです。動画で「速い思考・遅い思考」を使っているのは、この切り分けを説明するためのたとえです。
恋愛と婚活の違いは「条件が見えるかどうか」
恋愛では、多くの場合、相手の条件は最初から見えません。職場や学校で出会い、話して、惹かれてから、時間をかけて少しずつ相手の生活や価値観を知っていきます。少女漫画で「キライなアイツ」が「気になるアイツ」に変わっていくのも、感情が先で、条件は後から分かる流れです。
恋愛は「加点」で始まり、交際に入ると「減点」になりやすい
ここからは、私が現場で見てきた恋愛の流れです(研究ではなく、筆者の見方です)。
好きになった時点が、感情の最高点です。「好き!」が120%だとすると、そこから感情が上がることは少なく、交際に入ると、あとは減点で下がっていきやすくなります。
理由は、恋愛では感情の感覚で相手を見ているからです。付き合ってみると、「気が利かない」「話が面白くない」「私におごらない」といった小さな不満が、感覚として出てきます。減点が重なって、感情が50%くらいまで下がると、「別れようか」となります。数字は感覚的なたとえです。
お見合いは「マイナスからの加点」もある(就活の面接に近い)
お見合いは、出会いの形が最初から決まっています。相撲の立ち合いのように向き合い、事前に知った学歴や年収などのデータで判断し、そのうえで実際に会って確かめます。この流れは、就活の面接によく似ています。
そのため、実際に会ったときの印象が、0%ではなくマイナスから始まることもあります。それでも、少女漫画のように相手の良いところを見ていけば、加点されていきます。加点が50%を超えたら、本交際に進み、結婚を考えてよい、と私は会員さんに伝えています(筆者の目安で、研究にもとづく基準ではありません)。
恋愛では「下がって50%で別れを考える」、お見合いでは「上がって50%で本交際に進む」。同じ50%でも、向きが逆です。
結婚の前には、恋愛でも「リセット」をする
一方で、恋愛から結婚に至る人もいます。その人たちも、理想の相手であっても、結婚となると「本当にこの人でよいのか」と確認します。感情でいったんゼロに戻して、生活面を見直すこの作業を、動画では「リセット」と呼びました。プログラムの「デバッグ」(不具合の点検)に近い作業ですが、専門用語なので、分かりやすく「リセット」と表現しています。問題がなければ、恋愛から結婚に進みます。
つまり、恋愛結婚の人も、結婚の前には、感情の見方(恋愛脳)から、条件を確かめる見方(婚活脳)に切り替えています。これも私の見方ですが、恋愛と婚活は別物というより、一つの流れの中で脳の使い方が変わるものだと考えています。
婚活は「条件が先に見える」
婚活は、恋愛と順番が逆です。プロフィールに、年齢、仕事、居住地、結婚観などが最初から書かれています。感情より先に、条件が見えるのが婚活です。
だから婚活では、恋愛と同じやり方をすると、見えている情報を使わないまま、ときめきだけで進んでしまいます。あるいは、会った後に感情が少し下がっただけで、恋愛のように「減点」で終わらせてしまいます。ここに、失敗の入口があります。
感情で見るのが苦手な人ほど、就活のようにまとめる
動画で「婚活を就活のように設計する」と話したのは、最善の相手を探し続けるという意味ではありません。
相手を感情や直感で判断するのが苦手な人は、恋愛のやり方では、そもそも判断の手がかりが足りません。そういう人は、感情の代わりに情報を整理する方法を使うほうが、動きやすくなります。就活で、自己分析をして、希望を書き出して、優先順位をつけるのと同じです。
私が現場で勧めているのは、次のような整理です(実務上の一例です)。
- 自分にとって譲れない生活条件を書き出す(住む場所、仕事、お金、家族との距離など)
- 「あれば嬉しい」条件と「なくてもよい」条件を分ける
- 相手のプロフィールを、その整理に照らして確認する
研究① 条件が見えても、「惹かれるか」は別問題
条件を整理すれば、それで相手が決まるわけではありません。ここは研究が教えてくれます。
Eastwick & Finkel(2008)は、学部生163名を対象にスピードデートの実験を行いました。事前に答えた「理想の相手像」は、実際に会って惹かれた相手を予測できませんでした。この結果は、別の研究者による追試(2015年)でも、同じ方向で確認されています。
Joel ら(2017)も、100以上の特性や希望のデータを機械学習にかけましたが、会う前の情報から「この2人の間の相性」は予測できませんでした。Finkel ら(2012)も、オンライン交際サービスのマッチング方式には、相性を予測できるという十分な証拠がないと指摘しています。
つまり、条件は「会う前の目安」にはなっても、「惹かれるかどうか」までは教えてくれません。条件を確認する場面と、惹かれるかを感じる場面は、別のものとして分ける必要があります。これが「恋愛と婚活を混ぜない」の中身です。
なお、これらの研究が扱っているのは、会ったときの惹かれやすさです。結婚生活に必要な生活面の条件が大事かどうかについて、検証したものではありません。
研究② 整理しすぎにも注意が必要
Wilson & Schooler(1991)は、「なぜそう感じるか」を分析させた学生ほど、専門家の評価とずれることを報告しました(ジャムの実験で49名、授業選びの実験で243名)。
これは、整理をやめろという話ではありません。整理した条件だけで、会う前に相手を外しすぎないほうがよい、という注意として読めます。
では、どう分けるか:3つの場面
研究を踏まえた、私の実務的な解釈です。それぞれの場面の最初に、「今はどちらの脳を使う場面か」を自分に問いかけてみてください。
① 会う前:条件を整理して、見当をつける(遅い思考)
プロフィールで見える条件を、就活のように整理して確認します。ただし、絞りすぎません。生活面の譲れない条件を残し、それ以外は広めに持ちます。
② 会った後:実際の感覚を観察する(速い思考)
会ってみてどうだったかを見ます。恋愛のように、小さな減点で切らないことも大切です。最初の印象がマイナスでも、相手の良いところを見ていくと、加点されていくことがあります。感じ取るのが苦手な人は、次のように具体的な問いにすると分かりやすくなります(一例です)。
- 話していて緊張しすぎなかったか
- また会いたいと思ったか
③ 決断の前:生活面を熟慮する(遅い思考)
お金、住む場所、仕事、家族との距離など、結婚生活の設計を冷静に確かめます。恋愛結婚の人が無意識にやっている「リセット」を、意識して行う場面です。ここが、本来の意味での婚活脳の出番です。
よくある質問
Q. 婚活に「ときめき」は不要ですか?
A. 不要ではありません。ただし、条件を確認する場面と、惹かれるかを感じる場面を分けたほうが、混乱しにくくなります。会った後の感覚は、大切な情報として観察します。
Q. 理屈っぽい性格は、婚活で不利ですか?
A. 不利とは限りません。情報を整理して動く方法が合う人もいます。ただし、整理した条件だけで、会う前に相手を外しすぎないよう注意が必要です。
Q. 「就活のように婚活する」とは、最善の相手を探し続けることですか?
A. 違います。感情で判断するのが苦手な人が、感情の代わりに情報を整理して判断する、という意味です。
Q. 「加点が50%を超えたら本交際」は、研究にもとづく基準ですか?
A. いいえ。私が会員さんに伝えている、現場での目安です。数字は感覚的なたとえで、結果には個人差があります。
Q. 「システム1・2」を意識すると、感情をコントロールできるのですか?
A. 研究で確立された結論ではありません。私の現場経験にもとづく考えです。
この記事の限界
- 紹介した研究の多くは、欧米の学生やスピードデートを対象にしています。日本の仲人型・仮交際型の結婚相談所に、そのまま当てはまるかは検証されていません。
- 「証明された」のではなく、「そうした研究がある」という紹介です。
- 「恋愛は加点で始まり減点になりやすい」という流れ、「120%」「50%」という数字、お見合いでの「加点が50%を超えたら本交際」という目安、「結婚前のリセット」、「システム1・2を意識すると思考や感情をコントロールしやすくなる」という考え、「就活のようにまとめる」方法、「3つの場面」は、私の現場経験にもとづく解釈です。結果には個人差があります。
まとめ
- 恋愛は条件が後から見え、交際に入ると減点になりやすい
- お見合い・婚活は条件が先に見え、マイナスからでも加点で変わる。加点が50%を超えたら本交際へ、というのが私の目安
- 恋愛結婚の人も、結婚の前には「リセット」で婚活脳に切り替えている(筆者の見方)
- 感情で判断しにくい人ほど、就活のように情報を整理すると動きやすい
- 会う前は整理して見当をつけ、会った後は感覚を観察し、決断の前は熟慮する
理屈っぽいことは、欠点ではありません。使う場面を選べば、婚活の強みになります。
ミューコネクトは、おたく・内向型・考えすぎてしまう人に特化した結婚相談所です。「普通の人」を演じなくていい婚活を、一緒に設計します。
【無料相談はこちら】https://otakukonkatu.net/yoyaku/
参考文献
- Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2008). Sex differences in mate preferences revisited: Do people know what they initially desire in a romantic partner? Journal of Personality and Social Psychology, 94, 245–264.
- Selterman, D. F., Chagnon, E., & Mackinnon, S. P. (2015). Do men and women exhibit different preferences for mates? A replication of Eastwick and Finkel (2008). SAGE Open. DOI: 10.1177/2158244015605160
- Joel, S., Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2017). Is romantic desire predictable? Machine learning applied to initial romantic attraction. Psychological Science, 28(10), 1478–1489. DOI: 10.1177/0956797617714580
- Finkel, E. J., Eastwick, P. W., Karney, B. R., Reis, H. T., & Sprecher, S. (2012). Online dating: A critical analysis from the perspective of psychological science. Psychological Science in the Public Interest, 13(1), 3–66. DOI: 10.1177/1529100612436522
- Wilson, T. D., & Schooler, J. W. (1991). Thinking too much: Introspection can reduce the quality of preferences and decisions. Journal of Personality and Social Psychology, 60(2), 181–192. DOI: 10.1037/0022-3514.60.2.181
- Melnikoff, D. E., & Bargh, J. A. (2018). The mythical number two. Trends in Cognitive Sciences, 22(4), 280–293. DOI: 10.1016/j.tics.2018.02.001
- Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux.
